
院長:吉田お気軽にご相談ください!
足の付け根がズキッとする。朝起きたときに、股関節がこわばって動き出しにくい。歩いていると、だんだん重だるくなってくる。


院長の吉田です。
股関節の痛みは、ご相談の多いテーマのひとつです。そして正直にお伝えすると、カイロプラクティックが得意な部分と、手が届かない部分がはっきり分かれる領域でもあります。
私の母は、人工股関節の置換手術を受けています。家族として、手術という選択がどれだけ迷いを伴うものかも、その後どう変わったかも、そばで見てきました。だからこの記事では、「カイロに来てください」という話をするつもりはありません。ご自分の股関節に何が起きている可能性があるのか、どこに相談すべきなのか、そして今日から自分でできることは何か。その整理をしたいと思います。
なお、以下に出てくる病名は、いずれも医師が診断するものです。当院で診断を行うことはできません。「こういう状態がある」という知識として読んでいただければと思います。






股関節の痛みは原因が複雑に絡み合っていることが多いです。この記事を通じて、まずは全体像をつかんでいただけたらうれしいです
「股関節が痛い」と感じたとき、多くの方は関節そのものを思い浮かべます。けれど実際には、痛みの出どころは大きく三つに分かれます。
太ももの骨(大腿骨)と骨盤の受け皿(寛骨臼)が向かい合っている、そのすき間で起きている問題です。変形性股関節症や、骨と骨がぶつかるタイプの問題(大腿骨寛骨臼インピンジメント)がここに入ります。足の付け根の前側や、鼠径部の奥のほうに感じることが多く、C字を描くように手を当てて痛みの場所を示す方が多いのが特徴です。
お尻の横、骨の出っぱり(大転子)のあたりにある腱や筋肉の問題です。以前は「滑液包炎」と呼ばれていましたが、現在は中殿筋・小殿筋という筋肉の腱の傷みが主体と考えられています。横向きで寝ると痛い、その側を下にできない、椅子から立つ最初の一歩がつらい、という方はこちらの可能性があります。これは股関節の変形とは別物で、対応の仕方もまったく違います。
腰椎や仙腸関節の問題が、お尻や太ももの外側に痛みを送っていることがあります。
ひとつ、知っておくと役に立つ豆知識があります。股関節の痛みは、膝に出ることがあります。 閉鎖神経という神経の走り方の関係で、股関節のトラブルなのに本人は「膝が痛い」としか感じていない、ということが実際に起こります。とくにお子さんの「膝が痛い」は、股関節を確認する必要があります。膝のレントゲンだけ撮って異常なし、と言われ続けていた方が、股関節を診てもらってようやく話が進んだ、というケースは珍しくありません。
ここは飛ばさずに読んでください。以下に当てはまる場合、カイロプラクティックより先に、医療機関の受診をお願いします。
・転んだあと、足に体重をかけられない・立てない
・発熱をともなう強い股関節の痛み、じっとしていても激しく痛む
・明らかな外傷のあと、股関節が変形している・動かせない
カイロプラクティックが第一選択にならないケースは、確かに存在します。 そこを曖昧にしないことが、私たちの責任だと思っています
股関節の痛みで整形外科を受診すると、よく挙がる診断名が変形性股関節症です。関節の表面を覆う軟骨がすり減り、関節のかたちが少しずつ変わっていく状態を指します。
日本での特徴として知られているのが、臼蓋形成不全(きゅうがいけいせいふぜん)との関係です。骨盤側の受け皿が生まれつき浅いと、体重を支える面積が小さくなり、同じ体重でも軟骨の一部に負担が集中しやすくなります。
日本の変形性股関節症は、この形態が背景にあるものの割合が高いと報告されており、欧米の傾向とは異なります。女性に多いことも、複数の報告で一致しています。
レントゲンでの変形の程度と、実際の痛みの強さは、きれいには一致しません。画像上かなり変形があっても痛みがほとんどない方がいますし、逆に変形が軽くても強く痛む方がいます。これは股関節に限らず、膝や腰でも繰り返し確認されていることです。
「すり減った軟骨は再生しない。だから確実に悪化していく」という説明を目にすることがありますが、これは正確ではありません。軟骨が自然にはほとんど再生しないのは事実です。しかし、そこから先の進み方には大きな個人差があり、何年も大きく変わらない方もいれば、比較的短期間で進む方もいます。
「放っておけば必ず末期になる」という説明は、事実を超えています。不安を煽る目的でこの説明が使われることがありますが、私はそれをしたくありません。
一方で、痛みを我慢して何年も過ごすことをお勧めしているわけでもありません。痛みがあると動かなくなり、動かないと筋力が落ち、筋力が落ちるとさらに関節が守られにくくなる。この悪循環のほうが、多くの場合、現実的な問題です。早めに手を打つ意味があるとすれば、軟骨のためというより、この循環に入る前に止めるためです。






「変形が進んでいる=痛みが強くなる」ではありません。ここを誤解したまま怖がっている方が、本当に多いです
股関節の痛みに対して、現時点でもっとも証拠がしっかりしている対策は運動です。手技でも、注射でも、サプリメントでもありません。陸上での運動療法が痛みと生活のしやすさを改善することは、複数の研究をまとめた検証で確認されています。効果の大きさは劇的ではありませんが、安定して確認されている、というのが正直な表現です。
股関節にとっては直接的です。歩行時、股関節には体重の何倍もの力がかかります。少しの減量でも、関節が一日に受ける負担の総量は変わってきます。
ただ、これは「太っているのが悪い」という話ではありません。痛みで動けない期間があれば体重は増えます。責める話ではなく、順番の話です。
格好が悪いと感じて避ける方が多いのですが、痛む側と反対の手に杖を持つと、股関節にかかる力ははっきり減ります。ずっと使う必要はありません。痛みの強い時期に一時的に使って、動ける範囲を保つというのが賢い使い方です。動ける範囲が保てれば、筋力が落ちずに済みます。
正座やあぐらを一律に禁止する必要はありませんが、その姿勢のあとに痛みが増える方は、量を減らす価値があります。靴下を履く、足の爪を切る、床から立ち上がるといった動作がつらい場合は、椅子や台を使う、道具を使うなど、工夫で解決できることが少なくありません。頑張って曲げる練習をするより、そのほうが実際的です。
あお向けに寝て、両膝を立てます。片脚ずつ、膝をゆっくり外側へ倒していき、痛みが出る手前で止めて、ゆっくり戻します。5〜10往復を目安に、左右とも。
何のためかというと、股関節の動く範囲を保つためと、今日の自分の可動範囲を知るためです。股関節は、まず内側にひねる動きと開く動きから狭くなっていくことが多いので、ここを毎日確認していると、変化に気づきやすくなります。
痛みを押して広げないでください。狙いは伸ばすことではなく、動く範囲を確認して保つことです。手術を受けた方は脚の向きに制限がある場合があるので、主治医の指示を優先してください。
整形外科では、段階に応じていくつかの方法が提案されます。それぞれに役割があり、優劣で並べられるものではありません。
| 方法 | 役割 | 知っておきたいこと |
|---|---|---|
| 薬 | 痛みを抑えて、動ける状態を取り戻す | 痛みが減っている間に運動や生活の調整を進められるなら、意味のある使い方。長期に使う場合は胃や腎臓への影響を医師と相談 |
| 注射 | 関節内などへの注入で痛みを和らげる | 種類によって目的も持続も異なり、効果の出方には個人差がある |
| 運動療法 | 保存療法の中心 | 理学療法士に見てもらいながら行えるなら、それがもっとも確実 |
| 人工股関節置換術 | 傷んだ関節を人工物に置き換える | 成績は安定している一方、耐用年数や手術リスクがあり、タイミングの判断が重要 |
私の母は、この手術を受けています。
家族として迷いも見てきましたし、その上で申し上げるのですが、この手術は決して「最後の敗北」ではありません。整形外科の手術の中でも、成績がもっとも安定しているもののひとつです。ある大規模な調査では、入れた人工股関節のおよそ9割が15年後も入れ替えなしで機能していたと報告されています。25年という長期でみても、およそ6割という数字が出ています。
痛みが減り、歩ける距離が戻り、夜眠れるようになる。その変化の大きさは、実際に見ていると、はっきりしています。
もちろん、いいことばかりではありません。人工物である以上、耐用年数の問題は残ります。若い年齢で受ければ、生涯のうちに入れ替えが必要になる可能性は高くなります。手術には感染や脱臼といったリスクもあります。だからこそ、タイミングの判断が難しいのです。
そのうえで、私の立場をはっきり書きます。当院に来られた方でも、状態によっては手術という選択肢を積極的にお伝えします。保存的なケアで粘ることが常に正しいわけではありません。痛みで眠れず、外出が減り、生活が縮んでいく時間そのものが、その方から失われていくものだからです。
「手術を勧められたけれど、他の方法はないか」というご相談は、実際によくいただきます。私はそのとき、まだ手を打てる余地があるのかどうかを一緒に確認する、というお答えをします。余地がありそうなら試す価値がありますし、そうでなければ、そうお伝えします。手術を避けさせることが、私の仕事ではありません。






手術を避けるためにカイロへ、という考え方はしていません。まだ他に手が残っているかどうかを、一緒に確認するだけです
ここが、この記事でいちばん正直に書きたい部分です。
すり減った軟骨を手技で再生させることはできませんし、生まれ持った受け皿の浅さを深くすることもできません。変形の進行を止められるという証拠もありませんし、手術で入れた人工関節そのものにアジャストメントを行うこともありません。
股関節そのものへの手技については、質の高い試験で見せかけの施術と差が出なかったという報告もあります。都合の悪い話ですが、隠す気はありません。
一方で、冒頭に書いたことを思い出してください。股関節が痛い方のすべてが、関節の中の変形というわけではありません。
お尻の横の腱の問題、腰椎や仙腸関節から来ている痛み、股関節をかばい続けた結果として反対側や腰に出てきた痛み、片脚に体重を乗せられなくなった立ち方や歩き方。こうした関節の外側の要素には、評価も、手技でのアプローチも、動きの練習も、届く余地があります。
もう少し専門的に言えば、私たちが見ているのは「骨のズレ」ではなく、関節の動きと、そこから神経系へ入っていく感覚情報です。関節が動かなくなると、そこから脳へ届く情報が減ります。情報が減った状態で身体を使えば、動作は雑になり、負担は偏ります。ここに手を入れる余地がある。これは研究で確定した話というより、私が臨床で採っている見方です。
人工関節そのものには触れませんが、その周りは別です。反対側の脚、腰、足の使い方、長年かばってきた癖。術後は主治医と理学療法士の指示が最優先ですが、その枠の中で、身体全体のバランスを見ていくことはできます。
まとめると、股関節に対する私たちの立ち位置はこうです。主役ではありません。医師による評価と、運動療法と、必要なときの手術。その土台があったうえで、関節の動きと身体の使い方という角度から関われる部分がある。それ以上でも、それ以下でもありません。
股関節の痛みで来られる方の多くが、「もっと早く相談すればよかった」とおっしゃいます。ただ、それは「手遅れになるから急げ」という意味ではありません。痛みを抱えたまま、外出を減らし、人と会う機会を減らして過ごした時間そのものが、もったいなかった。そういう意味だと、私は受け取っています。
身体は、いつも一生懸命に適応しています。痛みも、かばう動きも、身体が守ろうとした結果であることが少なくありません。身体と戦うのではなく、身体が何を伝えようとしているのかを知っていただきたい。それが私たちの根っこにある考え方です。
まずは、上のセルフケアを一つ試してみてください。それで十分な方もいらっしゃいます。そして「病院では大きな問題はないと言われたけれど、まだつらい」「手術のタイミングを迷っている」という段階の方は、一度お話を聞かせていただければと思います。
できること、できないことを含めて、正直にお伝えします。
※一般的な情報提供を目的とした記事です。当院での評価・施術は、医師による診断・治療とは異なります。

